睡眠時無呼吸症候群(SAS)の症状・検査・治療を徹底解説|いびきや日中の眠気に気づいたら読むガイド
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の症状・検査・治療を徹底解説
「いびきがひどいと言われる」「日中の眠気が強い」「朝起きても疲れが取れない」――そんな症状を、年齢や仕事の疲れのせいだと思っていませんか?
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が何度も止まることで全身に負担をかける病気です。しかし、症状の多くが寝ている間に起こるため、自分では気づきにくく、発見が遅れてしまうことも少なくありません。
近年では、自宅でできる検査や負担の少ない治療法が普及し、早期発見・早期治療によって生活の質(QOL)を大きく改善できるようになっています。
この記事では、睡眠時無呼吸症候群の症状や検査方法、CPAPやマウスピースによる治療、生活習慣改善のポイントまで、専門的な内容を分かりやすく解説します。ご自身やご家族に思い当たる症状がある方は、ぜひ参考にしてください。

1. なぜ「疑う」ことが一番大切なのか?(気づきにくい最大の理由)
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療において、最も難しく、かつ最も重要な最初のハードルは「自分自身が病気かもしれないと疑うこと」です。なぜなら、SASの主な症状である「いびき」や「呼吸の停止(無呼吸)」は、すべて自分が寝ている間に起こるため、自分一人ではその異常に気づくことがほぼ不可能だからです。
実際に、病院を受診する患者さんの多くは、ベッドパートナーやご家族から「昨日、寝ている時に息が止まっていたよ」「いびきがうるさくて心配になった」と目撃され、指摘されたことをきっかけにしています。最近では病気が一般に広まった影響で、ご家族が「昨日、無呼吸していましたよ」と表現することもあるほどです。
しかし、一人暮らしの場合や、家族と寝室が別の場合、この「夜の異常」に気づくチャンスが失われてしまいます。そして、日中に強い眠気やだるさがあったとしても、多くの人は「最近仕事が忙しくて疲れているだけだ」「昨日は寝るのが遅かったから寝不足なだけだ」と、自分の体調不良の理由を勝手に納得させて(正当化して)しまいがちです。 患者さん自身や周りのご家族が「この眠気やいびきは、もしかしてSASという病気かも?」と疑って医療機関を受診しない限り、絶対に診断や治療には繋がりません。
どんなに優れた検査機器や治療法があっても、まずは「疑う視点」を持つことが、健康を取り戻すための絶対条件なのです。
2. SASを疑うべき「夜と昼のサイン(症状)」と隠れた病気
では、どのような症状があればSASを疑うべきなのでしょうか。大きく「夜のサイン」と「昼のサイン」に分けられます。
◉夜のサイン:大きないびきをかく、睡眠中に呼吸が止まる(無呼吸)、息苦しくて夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)、朝起きた時に口がカラカラに乾いている(口呼吸のサイン)、などです。
◉昼のサイン:日中の強い眠気、体のだるさ(倦怠感)、朝起きた時に頭が痛い、熟睡感がない、集中力や記憶力が低下する、などです。
とくに「日中の強い眠気」には最大限の注意が必要です。SASが日本中で広く知られるきっかけとなった2003年の山陽新幹線の居眠り運転事故では、当時33歳の運転士が強い眠気に襲われ、時速数百キロで走る新幹線を運転中に、なんと8分間も居眠りをしてしまいました。この運転士は体重が約100キロあり、睡眠中のいびきも大きく、5〜6年前から寝ている最中に何度も目が覚めたり、家族から息が止まっていると指摘されたりしていましたが、事故を起こした後に初めて専門医によってSASと診断されました。このように、放置すれば社会的な大事故に繋がる危険性があります。
さらに、睡眠が分断されることで気分の落ち込みが現れ、「うつ病」と間違えられてしまうケース(あるいは実際に合併しているケース)も少なくありません。実際に、うつ病の患者さんの20%にSAS(閉塞性睡眠時無呼吸)が合併し、逆にSASの患者さんの20%がうつ病に該当するという報告もあります。また、夜間に「眠れない」という不眠症の症状の裏にSASが隠れていることもあります。
3. 睡眠を「見える化」する2つの検査(簡易モニターとPSG)
「もしかしてSASかも?」と疑い、内科や耳鼻咽喉科、睡眠専門のクリニックなどの「医科」を受診すると、まずは問診が行われ、その後、主に2段階の検査へと進みます。
①簡易モニター(スクリーニング検査) まずは、自宅で手軽に行える検査から始めます。指先や鼻の下に小さなセンサーをつけていつも通りに眠るだけで、呼吸の状態や体内の酸素不足(酸素飽和度低下)を調べることができます。この検査は脳波を測らないため、厳密には「本当に寝ている時間」ではなく「機械をつけていた時間」を基準にして、1時間あたりの呼吸イベントの回数(REI:呼吸イベント指数)を簡易的に計算します。この検査で「疑いが強い」と判定された場合、次の詳しい検査へ進みます(数値が非常に高い場合は、この時点でCPAP治療が始まることもあります)。
②PSG検査(終夜睡眠ポリグラフ検査) より正確な確定診断を行うための最も詳しい検査です。原則として病院に一晩入院し、頭に脳波のセンサー、目の周りに眼球の動きを測るセンサー、あごや足に筋肉の動きを測るセンサーなど、たくさんの機器を取り付けて眠ります。「脳波」を測ることで、「1分1秒まで本当に眠っている時間」を正確に計算できるため、ここで出される「AHI(無呼吸低呼吸指数)」という数値が、最終的な重症度を決める最も確実な診断基準となります。
4. 治療の流れ①:確実な効果をもたらす「CPAP療法」と耳鼻科の重要性
検査結果をもとに総合的な治療方針(マネジメント)を決定するのは、内科などの「医科」の医師です。重症度(AHIの数値)や患者さんのライフスタイルに合わせて、主に以下の治療法が提案されます。
中等症から重症の患者さんに向けた第一選択の治療法が「CPAP(持続陽圧呼吸療法)」です。寝る時に鼻にマスクを装着し、機械から空気を送り込んで空気の通り道(気道)を広げます。最新の機器では、毎晩の睡眠データや使用状況をクラウド上に送信し、医師と共有する「遠隔モニタリング」が可能になっています。 CPAP治療を快適に続ける上で非常に重要なのが、「耳鼻咽喉科との連携」です。
花粉症やアレルギー性鼻炎などで「鼻づまり(鼻閉)」があると、無意識に口呼吸になってしまい、気道がさらに狭くなったり、CPAPのマスクが苦しくて外してしまったりします。そのため、CPAPを始める前や治療中に、点鼻薬や抗アレルギー薬などで鼻の治療を並行して行うことが、治療を成功させる大きな鍵となります。
5. 治療の流れ②:手軽で続けやすい「マウスピース(OA)治療」と歯科連携
CPAP療法の保険適用基準を満たさない比較的軽症の患者さんや、「出張が多くてCPAPを持ち運べない」「どうしてもCPAPのマスクに慣れない」という方には、第二の選択肢として「マウスピース(OA:口腔内装置)治療」が提案されます。 現在主流の「MAD」というタイプは、寝る時に下顎を少し前に出して固定することで、舌が喉の奥に落ち込むのを防ぎます。コンパクトで携行性に優れているため、毎日継続しやすい(アドヒアランスが良い)という大きなメリットがあります。 しかし、この治療を行うには「医科と歯科の連携」が不可欠です。
歯科医院に直接行ってもSASの検査や診断はできないため、まずは医科で診断を受けます。そして、SAS用のマウスピース作製に対応している(日本睡眠学会や日本睡眠歯科学会の認定を受けた)「歯科」を紹介してもらい、一人ひとりの歯型に合わせたオーダーメイドの装置を作ります。治療開始後は、呼吸が改善したかの判定は「医科」で、歯並びや顎の関節に影響(副作用)が出ていないかのチェックは「歯科」で行うという、医療機関同士の協力が必要です。 また、CPAPの圧力が高くて苦しい人が、マウスピースを着けた上でCPAPを装着して圧力を下げたり、普段はCPAP、外泊時はマウスピースと使い分けたりする「併用」という柔軟な方法も可能です。
6. 治療の流れ③:根本的な解決を目指す「減量」とその他の選択肢
機器を使った治療と並行して、すべての患者さんに推奨されるのが「減量(ダイエット)と生活習慣の改善」です。SASの最大の原因は肥満ですが、とくに日本人などのアジア人は顎の骨格が小さいため、わずか5〜10%程度の体重を減らすだけでも、気道が広がって劇的に症状が改善する(AHIが半減する)可能性があることが報告されています。 また、小児のSASの場合は、アデノイドや扁桃腺の肥大が原因であることが多いため、大人のようにCPAPから始めるのではなく、耳鼻咽喉科での「手術(摘出術)」が第一選択の治療となります。
まとめ:疑わないと始まらない。迷わず専門機関へ
SASの検査や治療の技術は日々進化しており、睡眠の状態を正確に測り、一人ひとりに合った快適な治療を選べる時代になりました。しかし、すべての始まりは「この症状、もしかして病気なのでは?」と疑うことからスタートします。 いびきや日中の強い眠気、朝のだるさを、単なる加齢や疲れ、寝不足だと自己判断して放置しないでください。
自分自身はもちろん、ご家族に思い当たるサインがあれば、まずは内科や耳鼻咽喉科、睡眠専門の医療機関に迷わず相談してみましょう。病気を疑うその「気づき」が、あなたの命と健康、そして安全な毎日を守るための最も大切な第一歩となります。
◉睡眠時無呼吸症候群について、よくいただくご質問はこちらをご確認ください。
→よくある質問
◉睡眠時無呼吸症候群についてさらに詳しい内容はこちらをご覧ください。
→神戸元町呼吸器内科・アレルギークリニック
◉睡眠時無呼吸症候群に関する詳しい情報は 厚生労働省公式ページ をご参照ください。
