【155】高山(登山)に行くとき、無呼吸の人は高山病になりやすいですか?
はい。酸素が薄い環境では、無呼吸による酸欠がさらに悪化するため、リスクは高まります。
標高が高い場所では、気圧が低く酸素が薄いため、健康な人でも寝ている間に呼吸が乱れる「チェーン・ストークス呼吸(中枢性無呼吸の一種)」が起こりやすくなります。 もともと無呼吸(閉塞性)がある方が高山に行くと、この「中枢性」と「閉塞性」の両方が重なってしまい、血液中の酸素濃度(SpO2)が危険なレベルまで下がることがあります。これにより、高山病の症状が出やすくなったり、心臓に強い負担がかかったりします。
参考文献 (References)
1. 国際的な登山医学のガイドライン
- UIAA MedCom Consensus Guide: Sleep problems at high altitude (2019)
- 解説: 国際山岳連盟(UIAA)医療委員会が発表している公式ガイドラインです。
- 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の患者は、高地において「深刻な低酸素血症」に陥るリスクが高いと警告しています。
- 推奨事項として、「可能であればバッテリー駆動のCPAPを持参すること」や、重症の場合は「アセタゾラミド(呼吸刺激薬/高山病予防薬)の併用」を検討すべきであると記載されています。
2. 実際の登山でのデータ(酸素濃度の低下)
- Burgess KR, et al. Exacerbation of obstructive sleep apnea by high altitude. Respirology. 2004.
- 解説: 睡眠時無呼吸症候群の患者さんが高地(標高2,750mなど)に行った時の状態を調査した研究です。
- 平地に比べて、高地では「無呼吸の回数が大幅に増える(中枢性無呼吸が加わるため)」ことや、「夜間の動脈血酸素飽和度(SpO2)が著しく低下する」ことが確認されました。
- CPAPを使用することで、これらの悪化を防ぎ、安全に睡眠が取れることも示されています。
3. メカニズムの解説(チェーン・ストークス呼吸)
- Nussbaumer-Ochsner Y, et al. Sleep and sleep disorders at high altitude. Current Opinion in Pulmonary Medicine. 2012.
- 解説: 高地特有の「周期性呼吸(Periodic breathing / チェーン・ストークス呼吸)」について解説した論文です。
- 薄い酸素を補おうとして呼吸が激しくなりすぎ、その反動で呼吸が止まってしまう生理現象ですが、これがSAS患者にとっては致命的な酸素不足を招く「ダブルパンチ」になるメカニズムが詳述されています。
