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睡眠時無呼吸症候群(SAS)は決して「特別な人の病気」ではありません

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は決して「特別な人の病気」ではありません

「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」と聞くと、「放っておくと死んでしまう怖い病気」といった少し極端なイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし、病気について必要以上に恐れるのではなく、実際の「疫学(えきがく)」的なデータに基づき、数字で客観的に理解することがとても大切です。

疫学とは、「どんな人が、どのくらいの割合で病気になっているか」「どんな要因が病気を引き起こしているか」を調査する学問です。この疫学的な調査によって明らかになってきたのは、SASは決して特別な人だけがなる病気ではなく、「コモンディジーズ(世の中にありふれた一般的な病気)」であるという事実です。

そして、SASは単独で起きるだけでなく、私たちの身近にある様々な病気や症状と密接に関わり合っていることがわかってきました。今回は、SASがどのような病気と合併しやすいのか、その関係性について詳しく見ていきましょう。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は「放っておくと死んでしまう怖い病気?

1. 最大の要因「肥満」との関係と、日本人特有の「骨格」の問題

SAS(とくに気道が物理的にふさがるタイプのOSA:閉塞性睡眠時無呼吸)を引き起こす最大の要因は「肥満」です。首の周りに脂肪がつくことで空気の通り道(上気道)が狭くなり、いびきや無呼吸を引き起こしやすくなります。実際に、減量(ダイエット)はSASの根本的な治療にもなり、体重を20%減らすことで、重症度を示すAHI(無呼吸低呼吸指数)が50%程度まで減少するというデータもあります。

しかし、ここで注意が必要なのは、「痩せているから自分は大丈夫」という思い込みです。日本人をはじめとするアジア人は、欧米人に比べて顎(あご)の骨格が小さいという特徴があります。そのため、肥満でなくても、少しの下顎の後退や舌の大きさのバランスによって気道が狭くなり、SASを発症する人が少なくないのです。日本人のように顎のサイズが小さい場合は、少し体重が減るだけでも大きな効果が得られやすく、20%も痩せなくても、10%程度の減量でAHIが50%程度まで減る可能性があると報告されています。

まずは5〜10%の減量を目標にすることが推奨されていますが、同時に「痩せ型でもひどいいびきや日中の眠気がある場合は要注意」と覚えておきましょう。

2. 精神疾患「うつ病」や「不眠症」とのお互いに深い関わり

SASと精神疾患、とくに「うつ病」との間には非常に深い関連があることがわかっています。ある報告によると、うつ病の患者さんの20%にOSAが合併しており、逆にOSAの患者さんの20%がうつ病に該当するとされています。これらはどちらも世の中に多く見られる一般的な病気ですが、双方が影響し合っていると考えられています。

例えば、OSAによって夜中に何度も呼吸が止まり、その度に無意識に脳が覚醒して睡眠が分断されると、日中に強い眠気や気分の落ち込みが現れます。この睡眠の分断が影響して、隠れていたうつ病の症状が表面化(顕在化)してしまう状態も考えられます。また、日中の強い眠気やだるさを訴えて病院に来た場合、それがSASによるものなのか、うつ病によるものなのかをしっかりと見極める(鑑別する)ことが非常に重要です。

さらに、SAS患者さんの中には「不眠症(眠れない)」を訴える人も少なからずいます。日中の眠気だけでなく、「そもそも夜に眠りにつけない」「途中で何度も目が覚めてしまう」という症状の裏にも、SASや精神的な疾患が隠れている場合があり、医師とよく相談しながら治療を進める必要があります。

3. 身近な「アレルギー性鼻炎(鼻づまり)」が睡眠の質を下げる

花粉症などのアレルギー性鼻炎の3大症状といえば、くしゃみ、鼻水、鼻づまり(鼻閉)ですが、このうち「鼻づまり」がある場合は、OSAの合併リスクが高いことが知られています。 鼻が詰まっていると、人間は息苦しさから無意識に「口呼吸」をするようになります。

しかし、口を開けて寝ることで下顎が下がり、舌が喉の奥に落ち込みやすくなるため、上気道の狭窄(狭くなること)がさらに悪化してしまうことがわかっています。鼻呼吸には本来、吸い込んだ空気を適度に加湿・加温したり、呼吸を調整したりする大切な機能がありますが、口呼吸ではそれが活かされません。 さらに、鼻づまり自体が主観的な睡眠の質を低下させる原因にもなります。

SASの代表的な治療法であるCPAP(鼻マスク)を行っている患者さんでも、花粉症の時期に鼻が詰まるとマスクが苦しくて使えなくなってしまうことがよくあります。そのため、急にいびきや無呼吸が悪化する場合は、「ただの鼻炎」と軽く考えず、耳鼻咽喉科などでしっかりと鼻の治療(抗アレルギー薬や点鼻薬など)を行うことが、快適な睡眠を取り戻すための大きな鍵となります。

4. 「生活習慣病」や「その他の内科疾患」との負のスパイラル

SASは、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった「生活習慣病」とも深く関わっています。これらはすべて、OSAの最大の原因である「肥満」と共通の背景を持っています。睡眠中に何度も無呼吸になり、体が酸欠状態になったり脳が起きたりすることで交感神経が興奮し、血圧や血糖値が上がりやすくなってしまうのです。したがって、重症のOSAを治療することは、将来の心血管病(心筋梗塞や脳卒中など)を予防するという非常に重要な意義を持っています。

また、すでに心不全などの心疾患を発症している患者さんの場合、気道がふさがるOSAだけでなく、脳からの呼吸の指令がうまくいかなくなる「CSA(中枢性睡眠時無呼吸)」という少し特殊なタイプのSASが合併することもあります。 その他にも、気管支喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)といった呼吸器の病気や、胃酸が逆流して胸焼けを起こす「胃食道逆流症」なども、SASの病態と密接に関わっていることが知られています。このように、SASは体全体の内科的な健康状態とリンクしているのです。

5. 「交通事故」のリスクと社会的な取り組み

個人の健康問題にとどまらず、SASが社会全体に大きな影響を与えていることを示すデータもあります。その代表例が交通事故との関連です。 日本でSASが一般に広く認知されるきっかけとなったのは、2003年に起きた山陽新幹線の居眠り運転事故でした。時速数百キロで走る新幹線を運転中に、運転士が8分間も居眠りをしてしまったという衝撃的なニュースです。

この運転士は体重が約100キロあり、いびきも大きく、強い日中の眠気に襲われていましたが、のちに専門医によってSASと診断されました。 これを機に、SASが重大な交通事故を引き起こす可能性がある病気であることが世の中に知れ渡り、トラックやバスなどの運輸業界では、ドライバーに対するSASのスクリーニング検査(検診)が積極的に行われるようになりました。

国土交通省や全日本トラック協会などから安全管理のマニュアルが策定され、ドライバーの睡眠や健康を管理することが、社会の安全を守るための重要なルールとして定着しつつあります。

まとめ:正しい知識で「隠れた合併症」を見逃さないために

疫学的なデータからSASの全体像を見ていくと、この病気がいかに身近で、うつ病や不眠症、アレルギー性鼻炎、生活習慣病、そして交通事故の要因など、様々な問題と密接に絡み合っているかがよくわかります。SASは単なる「いびき」や「眠気」だけの問題ではなく、心身のあらゆる不調のサインかもしれないのです。

もし、ご自身やご家族の睡眠状態や日中の強い眠気に不安を感じたら、放置せずに専門の医療機関に相談してみましょう。病気のつながりを正しく理解し、適切に対処することが、健康で安全な生活を守る第一歩となります。

【参考文献・参考資料】

1. うつ病とOSA(閉塞性睡眠時無呼吸)の合併に関する報告 うつ病患者の20%にOSAが合併し、OSA患者の20%がうつ病に該当するという報告。
 ◉J Clin Psychiatry. 2003; 64: 1195-200; quiz, 1274-6.

2. 減量(体重減少)によるAHI(無呼吸低呼吸指数)改善効果の報告 体重を20%減量することでAHIが50%程度まで減少するというデータ。
 ◉JAMA. 2000; 284: 3015-21.

3. アレルギー性鼻炎(鼻閉症状)と睡眠の質に関する報告 鼻閉症状自体が主観的な睡眠の質に影響を及ぼすという報告。
 ◉Am J Rhinol. Sep-Oct 2007; 21: 564-9.

4. SASと交通事故に関する文献および報道
 ◉富田康弘, 成井浩司. 【睡眠時無呼吸症候群】睡眠時無呼吸症候群と交通事故. 日本内科学会雑誌, 2020; 109: 1095-100.
 ◉「居眠り運転士、睡眠時無呼吸症候群か 熟睡できず、昼間に眠気」朝日新聞, 2003年3月3日 朝刊

5. 運輸・自動車業界におけるSAS対策マニュアル
 ◉国土交通省「自動車運送事業者における睡眠時無呼吸症候群対策マニュアル~SAS対策の必要性と活用~」(2015年策定)
 ◉全日本トラック協会「トラックドライバー睡眠マニュアル」(2019年作成)

◉睡眠時無呼吸症候群について、よくいただくご質問はこちらをご確認ください。
よくある質問

睡眠時無呼吸症候群についてさらに詳しい内容はこちらをご覧ください。
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◉睡眠時無呼吸症候群に関する詳しい情報は 厚生労働省公式ページ をご参照ください。

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