「痩せているから大丈夫」は間違い!顎が小さい人が睡眠時無呼吸になりやすい理由
顎が小さい人が睡眠時無呼吸になりやすい理由
「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」と聞いて、どのような人をイメージしますか? 多くの方が、「太っていて首が太く、大きないびきをかく中年男性」を想像するのではないでしょうか。
確かに、肥満はSASの大きなリスク要因です。 しかし、「私は痩せているから関係ない」「ダイエットする必要もないし大丈夫」と考えるのは、非常に危険な間違いです。
実は、日本人の睡眠時無呼吸症候群患者の約3割〜4割は、肥満ではありません。 なぜ、痩せているのに無呼吸になってしまうのでしょうか? その最大の原因は、日本人に多い**「顎(あご)の小ささ」**にあります。
今回は、神戸元町呼吸器内科・アレルギー科クリニックが、痩せ型の人が陥りやすい「隠れ睡眠時無呼吸」の原因と対策について解説します。
日本人と欧米人の決定的な「骨格」の違い
欧米では、SAS患者の大多数が肥満(BMI30以上)です。しかし、日本ではBMI25未満の「普通体型」や「痩せ型」の患者さんが非常に多く見られます。
これには、骨格の違いが大きく関係しています。 欧米人は顎がガッチリとしていて奥行きがあるのに対し、私たち日本人は顎が小さく、奥行きが浅い(平たい顔立ち)という特徴があります。
日本では「小顔」はスタイルが良いとされ、憧れの対象になりがちですが、呼吸の観点から見ると「気道のスペースが狭くなりやすい」という弱点を抱えていることになるのです。
なぜ、「顎が小さい」と無呼吸になるのか?
気道(空気の通り道)の広さは、「骨格(入れ物)」と「中身(舌や扁桃腺などの組織)」のバランスで決まります。
分かりやすく「箱」と「クッション」で例えてみましょう。
- 顎=箱(舌を収めるスペース)
- 舌=クッション
【太っている人の場合】 「箱」の大きさは普通でも、「クッション(舌やのどの脂肪)」が大きすぎて、箱からはみ出してしまい、気道を塞ぎます。
【顎が小さい人の場合】 「クッション(舌)」の大きさは普通でも、それを収める「箱(顎)」が小さすぎるため、クッションが収まりきらず、喉の奥にはみ出して気道を塞いでしまうのです。
特に仰向けで寝ると、重力で舌が喉の奥に落ち込みます(舌根沈下)。顎が小さい人は、元々のスペースに余裕がないため、少し舌が落ち込んだだけで、すぐに空気の通り道が完全に塞がれてしまうのです。
あなたは大丈夫?「小顎(しょうがく)」セルフチェック
自分では気づきにくい骨格の特徴ですが、鏡を見てチェックできるポイントがあります。
1. 横顔のライン(Eライン)
横顔を見たとき、顎先が後ろに引っ込んでいませんか? 鼻先と顎先を結んだ線(Eライン)よりも、唇が前に出ている場合、下顎が小さい、または後ろに下がっている可能性があります(下顎後退)。

2. 歯並びが悪い(乱ぐい歯)
歯並びがガタガタしている、入りきらずに重なっている場合、それは「歯が並ぶためのスペース(顎の骨)が小さい」という証拠です。
3. 下の歯の内側に「骨の出っ張り」がある
舌を入れるスペースが狭いため、体が防御反応として骨を隆起させていることがあります(骨隆起)。
これらの特徴があり、かつ「いびき」や「日中の眠気」がある場合は、痩せていてもSASである可能性が極めて高いと言えます。
女性や若年層も要注意
「小顔」の女性や、最近の顎がほっそりとした若者も、SASのリスク予備軍です。 特に女性の場合、閉経前は女性ホルモンの働きによって筋肉の緊張が保たれ、気道が塞がりにくくなっています。しかし、閉経後はホルモンの減少により、一気にいびきや無呼吸が悪化するケースが多々あります。
「夫のいびきはうるさいけど、自分は大丈夫」と思っている奥様も、実は「隠れ無呼吸」になっているかもしれません。
痩せ型SASの治療法:「マウスピース」という選択肢
「CPAP(シーパップ:鼻から空気を送る装置)」はSASの標準的な治療法ですが、「大掛かりな装置をつけるのは抵抗がある」という方もいらっしゃいます。
実は、顎が小さいことが原因の軽度のSASの場合、「口腔内装置(マウスピース/OA)」が非常に効果的です。
これは、下顎を少し前に出した状態で固定するマウスピースです。 下顎を前に出すことで、のどの奥のスペースが広がり、舌が落ち込むのを防ぎます。 持ち運びも簡単で、出張や旅行が多い方にも適しています。 ※重症度や歯の状態によっては適応にならない場合もあります。
まとめ:顎が小さい、小顔と言われる方は一度ご相談を
「太っていないから」という理由で、いびきや眠気を放置するのはやめましょう。 あなたのその不調は、日本人に多い「骨格由来の睡眠時無呼吸症候群」かもしれません。
神戸元町呼吸器内科・アレルギー科クリニックでは、体型や骨格、重症度に合わせた最適な治療法をご提案します。 痩せ型の方でも、適切な治療を行うことで「熟睡感」を取り戻し、高血圧などの将来のリスクを回避することができます。
「もしかして?」と思った方は、ぜひお気軽に当院の検査を受けてみてください。
参考文献
日本呼吸器学会「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」
Hida W, et al. Prevalence of sleep apnea among Japanese industrial workers. Thorax. 1993.(日本人におけるSAS有病率と体型の関連)
Isono S. Craniofacial abnormalities in obstructive sleep apnea. Curr Opin Pulm Med. 2004.(頭蓋顔面形状とSASの関係についての研究)
