閉経後にいびきをかくようになったのはなぜですか?
気道の筋肉を支えていた「女性ホルモン」が減少するからです。
女性ホルモン(プロゲステロン)には、気道の筋肉の活動を高めて広げる作用があります。閉経まではこのホルモンに守られていますが、更年期を過ぎて分泌が減ると、男性と同じように喉の筋肉が緩みやすくなります。
実際に、閉経後の女性の有病率は閉経前の約3倍に跳ね上がり、男性とほぼ変わらない割合になります。「年齢のせい」と諦めがちですが、ホルモンバランスの変化による病的な変化ですので、治療によって改善が期待できます。
参考文献 (References)
1. 閉経とSAS発症リスクの関係を証明した研究
- Bixler EO, et al. Prevalence of sleep-disordered breathing in women: effects of gender, menopause, postmenopausal hormone use, and age. American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine. 2001.
- 解説: 女性の睡眠呼吸障害に関する大規模な疫学調査です。
- 閉経後の女性は、閉経前の女性に比べてSASになるリスクが約2.6倍〜3.5倍高くなることを報告しました。
- さらに、ホルモン補充療法(HRT)を受けている女性ではリスクが低かったことから、女性ホルモンの有無が気道の安定性に直接関与していることが示されました。
2. 女性ホルモン(プロゲステロン)の筋肉への作用
- Popovic RM, White DP. Upper airway muscle activity in normal women: influence of hormonal status. Journal of Applied Physiology. 1998.
- 解説: 米国ハーバード大学の研究者らによる生理学的な研究です。
- 女性ホルモンの一種である「プロゲステロン」が、オトガイ舌筋(舌を支える筋肉)の活動を活発にさせ、気道が潰れるのを防いでいることを明らかにしました。
- 閉経によりプロゲステロンが減少すると、この筋肉の張りが失われ、睡眠中に舌が落ち込みやすくなるメカニズムが解明されています。
3. 日本の診療ガイドライン
- 日本呼吸器学会
- 『睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020』
- 解説: 疫学の項目において、「女性では閉経後に有病率が増加する」ことが明記されています。
- また、閉経後の女性は、男性と比較して「肥満の程度が軽くても無呼吸になりやすい」傾向があることや、いびき音よりも「不眠」や「倦怠感」を訴えることが多いという性差(ジェンダー差)についても言及されています。
