「簡易検査」と「精密検査」で基準が違う?睡眠時無呼吸症候群と診断されるAHIの数値とは
「簡易検査」と「精密検査」で基準が違う?睡眠時無呼吸症候群と診断されるAHIの数値とは
「検査結果が返ってきたけど、この数値はどういう意味?」 「簡易検査で『中等症』と言われたけど、もっと詳しい検査が必要なの?」
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査を受けた後、このような疑問を持つ方は少なくありません。 実は、SASの治療(特にCPAP療法)を保険適用で始めるための基準は、「どの検査を受けたか」によって異なります。
キーワードは【AHI(無呼吸低呼吸指数)】です。
今回は、神戸元町呼吸器内科・アレルギー科クリニックが、診断の決め手となる「AHI」の読み方と、簡易検査・精密検査それぞれの診断ラインについて解説します。

1.診断の物差し「AHI」とは?
まず、全ての基準となる「AHI(Apnea Hypopnea Index)」について理解しておきましょう。 日本語では「無呼吸低呼吸指数」といい、【睡眠1時間あたり、何回呼吸が止まった(または浅くなった)か】を表す数値です。
この回数が多いほど、重症度が高くなります。
・正常範囲: 5未満
・軽症: 5以上 〜 15未満
・中等症: 15以上 〜 30未満
・重症: 30以上
2.検査方法による「CPAP導入基準」の違い
SASの代表的な治療法である「CPAP(シーパップ)療法」を健康保険で受けるためには、以下の基準を満たす必要があります。 ここが少しややこしいのですが、「簡易検査」と「精密検査(PSG)」では、合格ライン(治療開始ライン)が異なります。
① 無呼吸簡易検査(アプノモニター)の場合
自宅でセンサーをつけて行うスクリーニング検査です。
・CPAP適応基準:AHI 40以上
簡易検査の結果だけで即座にCPAP治療を始めるには、AHIが40以上(超重症レベル)である必要があります。
② ポリソムノグラフィ(PSG検査)の場合
脳波なども測定する、より詳しい精密検査です。
・CPAP適応基準:AHI 20以上
PSG検査であれば、AHIが20以上あればCPAP治療を保険適用で開始できます。
3.なぜ、簡易検査の基準は厳しいのか?
「精密検査なら20でいいのに、なぜ簡易検査だと40も必要なの?」と思われますよね。 これには、「検査の精度」が関係しています。
簡易検査の弱点:「寝ていない時間」も含まれてしまう
簡易検査は、脳波を測らないため、「本当に眠っている時間」を正確に特定できません。 「布団に入ってから出るまでの時間(検査時間)」を分母として計算するため、目が覚めている時間も「呼吸が止まっていない時間」としてカウントされてしまいます。 その結果、実際の重症度よりもAHIが低く(軽く)出やすいという特性があります。
そのため、簡易検査だけで診断を確定するには、「低く見積もっても40以上あるなら間違いなく重症だ」と言えるだけの高い数値が必要になるのです。
PSG検査の強み:「寝ている時間」だけで計算できる
一方、PSG検査は脳波で「睡眠状態」を正確に判定します。 実際に眠っている時間だけを分母にして計算するため、より正確で、実態に即したAHIが算出されます。そのため、基準値が「20以上」と適正なラインに設定されています。
4.簡易検査で「AHI 20〜39」だった場合は?
ここが最も重要なポイントです。 簡易検査を受けて、結果が「AHI 25」や「AHI 35」だったとします。 この場合、基準の40には届かないため、簡易検査の結果だけではCPAP治療を保険で始めることができません。
しかし、「治療が必要ない」という意味ではありません。 簡易検査で低く出ているだけで、実際はもっと重症である可能性が高いからです。
この「グレーゾーン」の場合、次は【精密検査(PSG)】に進みます。 PSG検査を行い、改めてAHIが20以上であることが確認できれば、晴れてCPAP治療を開始することができます。
当院では、「簡易検査で中等症以上(AHI 20〜39)の疑いがあるが、40には届かなかった」という患者様には、見逃しを防ぐために精密検査(PSG)をお勧めしています。
まとめ:自己判断せず、医師の判断を仰ぎましょう
「簡易検査で40いかなかったから、自分は大丈夫なんだ」と自己判断して通院をやめてしまうのは非常に危険です。 そこには「隠れ重症」のリスクが潜んでいるかもしれません。
・簡易検査でAHI 40以上 → すぐに治療開始!
・簡易検査でAHI 20〜39 → 精密検査(PSG)で再チェック!
・PSG検査でAHI 20以上 → 治療開始!
この流れを覚えておいてください。
神戸元町呼吸器内科・アレルギー科クリニックでは、簡易検査から精密検査(在宅PSGや連携施設での実施)まで、スムーズな診断フローを整えています。 数値の意味がよく分からない、他院での結果を相談したいという方も、お気軽にご来院ください。
参考文献
・日本呼吸器学会「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」
・厚生労働省「保険診療におけるCPAP療法の適応基準」
・Kapur VK, et al. Clinical Practice Guideline for Diagnostic Testing for Adult Obstructive Sleep Apnea. J Clin Sleep Med. 2017.
睡眠時無呼吸症候群について、よくいただくご質問はこちらをご確認ください。
→よくある質問
睡眠時無呼吸症候群についてさらに詳しい内容はこちらをご覧ください。
→神戸元町呼吸器内科・アレルギークリニック
→ 睡眠時無呼吸症候群に関する詳しい情報は 厚生労働省公式ページ をご参照ください。
