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コラム

リスク・合併症編

薬を飲んでも下がらない高血圧、原因は「睡眠時無呼吸症候群」かも?

薬を飲んでも下がらない高血圧、原因は「睡眠時無呼吸症候群」かも?

「毎日ちゃんと降圧剤(血圧を下げる薬)を飲んでいるのに、全然数値が下がらない」 「薬の種類が増えていくばかりで、不安だ」 「特に、朝測る血圧だけが高い」
もしあなたがこのような悩みを抱えているなら、その原因は塩分の摂りすぎでも、薬の量不足でもないかもしれません。 疑うべきは、夜寝ている間の「呼吸」です。
実は、原因がはっきりしている高血圧(二次性高血圧)の中で、最も多い原因が「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」なのです。 今回は、神戸元町呼吸器内科・アレルギー科クリニックが、高血圧と睡眠時無呼吸の密接な関係について解説します。

薬が効きにくい「治療抵抗性高血圧」とは?

高血圧の治療を受けている患者さんの中で、
• 種類の異なる降圧薬を3種類以上飲んでも、目標の血圧まで下がらない
• あるいは、4種類以上の薬を飲んでやっとコントロールできている
このような状態を、医学的に「治療抵抗性高血圧」と呼びます。 そして驚くべきことに、この治療抵抗性高血圧の患者さんの約80%に、睡眠時無呼吸症候群が合併しているというデータがあります。
つまり、「薬が効かない」のではなく、「薬の効果を打ち消してしまうほどの悪化要因(=無呼吸)」が放置されている可能性があるのです。

なぜ、寝ている間に血圧が上がるのか?(メカニズム)

本来、人間の血圧は「夜、寝ている間」が一番低くなります。心身を休めるために、自律神経が「副交感神経(リラックスモード)」優位になるからです。
しかし、睡眠時無呼吸症候群の方は、真逆のことが体内で起こります。

① 窒息による「交感神経」の暴走
睡眠中に呼吸が止まると、体内の酸素濃度が低下します。脳は「酸素がない!緊急事態だ!」と判断し、交感神経(興奮モード)を一気に活発化させます。 心臓を激しく動かし、全身の血管をギュッと収縮させて血流を確保しようとするため、血圧が急上昇します。

② 血管へのダメージ
呼吸再開時の急激な血流再開や、繰り返される低酸素状態によって、血管の壁(血管内皮細胞)が傷つきます。これが動脈硬化を進行させ、さらに血圧が上がりやすい体を作ってしまいます。
[図解:正常な人の睡眠中の血圧変動(夜間下がる)と、SAS患者の血圧変動(夜間下がらない、または上がる=ノンディッパー/ライザー型)のグラフ比較]
この「夜間の血圧上昇」は、寝ている間ずっと続きます。 そのため、朝起きた時点でも血管が収縮したままになっており、これが次項の「早朝高血圧」につながります。

危険なサイン「早朝高血圧」を見逃さないで

家庭で血圧を測っている方は、「朝」と「夜」の数値を比べてみてください。
通常であれば、活動前の「朝」の方が低く、活動後の「夜」の方が高くなるか、同程度になります。 しかし、「朝の血圧が、夜よりも明らかに高い」場合、それは「早朝高血圧」と呼ばれ、脳卒中や心筋梗塞のリスクが最も高い危険なタイプです。
「寝起きに血圧が高い」ということは、「寝ている間に血圧が上がる何かがあった」ということです。その最大の容疑者が、睡眠時無呼吸症候群なのです。

根本治療で「減薬」も夢ではない

「高血圧の薬は、一度飲み始めたら一生やめられない」と思っていませんか? 睡眠時無呼吸症候群が原因の高血圧であれば、SASの治療を行うことで血圧が劇的に改善する可能性があります。
SASの代表的な治療法であるCPAP(シーパップ)療法を行うと、気道が確保され、睡眠中の呼吸が安定します。 すると、交感神経の暴走が収まり、血管への負担がなくなります。
実際、CPAP治療を継続することで、上の血圧(収縮期血圧)だけでなく、下の血圧(拡張期血圧)も有意に低下することが多くの研究で証明されています。 中には、主治医と相談の上で、降圧剤の量を減らすことができた患者さんや、薬を飲まなくて良くなった患者さんもいらっしゃいます。

CPAP治療を受けている人が、血圧計を見て数値が下がって安心している様子

CPAP治療を受けている人が、血圧計を見て数値が下がって安心している様子

生活習慣病のドミノを止めよう

高血圧と睡眠時無呼吸症候群は、お互いに悪影響を及ぼし合う「悪循環」の関係にあります。 さらに放置すれば、糖尿病、不整脈、脳卒中、心不全といった「生活習慣病ドミノ」が次々と倒れていくことになります。
その最初の一枚を食い止めるのが、SASの治療です。
「内科で薬をもらっているから大丈夫」と安心せず、「薬を飲んでいるのに下がらない」という事実に向き合ってみてください。
その高血圧は、血管からの「夜、息ができていないよ!」という悲鳴かもしれません。

まとめ:血圧手帳を持って、呼吸器内科へ

神戸元町呼吸器内科・アレルギー科クリニックでは、高血圧治療中の患者様の睡眠時無呼吸症候群の検査・治療を積極的に行っています。 普段お使いの「血圧手帳」をお持ちいただければ、より詳しい診断が可能です。 薬を増やす前に、まずは一度「睡眠の検査」をご検討ください。

参考文献
• 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」
• 日本呼吸器学会「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」
• Pedrosa RP, et al. Sequential treatment of resistant hypertension. Hypertension. 2011.(治療抵抗性高血圧患者におけるSAS有病率の研究)
• Bazzano LA, et al. Effect of continuous positive airway pressure on blood pressure: a systematic review and meta-analysis. JAMA. 2007.(CPAP治療による降圧効果のメタ解析)

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