女性も要注意!更年期以降に増える「女性の睡眠時無呼吸症候群」の特徴
女性も要注意!更年期以降に増える「女性の睡眠時無呼吸症候群」の特徴
「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」と聞くと、太った男性がいびきをかいている姿をイメージしませんか? そのイメージのせいで、多くの女性が「私は女性だし、太っていないから関係ない」と思い込み、病気を見逃してしまっています。
実は、女性も年齢を重ねるごとにSASのリスクが急増します。特に閉経を迎える「更年期」以降は、男性と同じくらい注意が必要です。 さらに厄介なことに、女性のSASは男性とは違った症状が出やすく、「うつ病」や「不眠症」と誤診されてしまうことも少なくありません。
今回は、神戸元町呼吸器内科・アレルギー科クリニックが、大人の女性が知っておくべき睡眠時無呼吸症候群の特徴について解説します。
1. なぜ「更年期」を境にいびきが増えるのか?
若い頃は静かに寝ていたのに、50代前後から急に「いびき」をかき始めたり、睡眠時無呼吸になったりする女性は非常に多いです。これには「女性ホルモン」が大きく関係しています。
女性ホルモン(プロゲステロン)の守り
女性ホルモンの一種である「プロゲステロン」には、脳の呼吸中枢を刺激して呼吸を整えたり、のどの周りの筋肉(上気道開大筋)の緊張を保って気道を広げたりする働きがあります。 つまり、若い女性は女性ホルモンの力によって、気道が塞がらないように守られているのです。
しかし、閉経前後(更年期)になると、この女性ホルモンの分泌が激減します。 守りを失った喉の筋肉は緩みやすくなり、重力に負けて舌が落ち込み、気道を塞いでしまうのです。これが、更年期以降に女性のSASが急増する最大の理由です。
2. 男性とは違う?女性特有の「サイン」
男性のSASは「激しいいびき」や「昼間の居眠り」が主な症状ですが、女性の場合は少し様子が異なります。 女性は体が小さく気道も細いため、完全に呼吸が止まる(無呼吸)手前の、「低呼吸(呼吸が浅くなる)」の状態が長く続く傾向があります。
そのため、派手な症状が出にくく、以下のような「なんとなくの不調(不定愁訴)」として現れることが多いのです。
・不眠(中途覚醒): 夜中に何度も目が覚める、寝つきが悪い。
・起床時の頭痛・肩こり: 朝起きると首や肩がガチガチに凝っている。
・倦怠感・だるさ: 寝ても疲れが取れず、体が重い。
・気分の落ち込み・イライラ: 些細なことでイライラしたり、やる気が出ない。
これらは更年期障害の症状と非常によく似ているため、「更年期だから仕方ない」「最近うつ気味なのかな?」と勘違いされやすく、適切な治療にたどり着けないケースが後を絶ちません。
3. 美容と健康の大敵!放置するリスク
女性にとって、質の良い睡眠は最強の美容液です。SASによる睡眠不足を放置することは、健康面だけでなく美容面でも大きなダメージとなります。
肌荒れ・老化の加速
睡眠中に分泌されるはずの「成長ホルモン」が減少し、肌のターンオーバーが乱れます。くすみ、シミ、シワの原因となります。
体重増加(代謝の低下)
睡眠不足は食欲を増進させるホルモン(グレリン)を増やし、代謝を低下させます。「更年期太り」だと思っていたら、実は睡眠時無呼吸による代謝異常だったということもあります。
心不全・脳卒中のリスク
閉経後は血管を守るホルモンも減少するため、ただでさえ動脈硬化のリスクが上がります。そこにSASによる低酸素負荷が加わると、高血圧や心不全のリスクが跳ね上がります。

4. 「小顔」の女性は特に要注意
前回の記事でも触れましたが、日本人は欧米人に比べて顎(あご)が小さいのが特徴です。 特に、顎が小さくほっそりとした「小顔」の女性は、もともと気道のスペースが狭いため、少しの筋力低下や体重増加で、すぐに気道が塞がってしまいます。
「太っていないから大丈夫」という過信は禁物です。
5. 検査は簡単!まずは相談を
「いびき外来に行くのは恥ずかしい」と感じる女性もいらっしゃるかもしれません。 しかし、当院には多くの女性患者様が来院されています。SASは恥ずかしい癖ではなく、ホルモンバランスの変化や骨格に起因する「病気」だからです。
当院の検査は、ご自宅でいつも通り寝ながらできる簡単なものです。 もし治療が必要になった場合、CPAP(シーパップ)療法を行うことで、睡眠の質が劇的に改善します。
「朝までぐっすり眠れるようになった」 「長年の頭痛や肩こりが消えた」 「肌の調子が良くなった」
治療を始めた患者様からは、このような喜びの声を多数いただいています。
まとめ:その不調、更年期のせいだけではありません
「最近疲れが取れない」「夜中に目が覚める」 その悩み、更年期障害や年齢のせいだと諦めていませんか?
もし、少しでも「いびき」を指摘されたことがあったり、顎が小さかったりする場合は、睡眠時無呼吸症候群を疑ってみてください。 適切な治療で良い睡眠を取り戻すことは、これからの人生を若々しく、健康に過ごすための近道です。
神戸元町呼吸器内科・アレルギー科クリニックは、女性の方でも相談しやすい環境を整えてお待ちしています。お買い物のついでやお仕事帰りに、ぜひお立ち寄りください。
参考文献
日本呼吸器学会「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」
Young T, et al. The occurrence of sleep-disordered breathing among middle-aged adults. N Engl J Med. 1993.(中年期におけるSASの発生率と性差)
Bixler EO, et al. Prevalence of sleep-disordered breathing in women: effects of gender. Am J Respir Crit Care Med. 2001.(女性におけるSAS有病率と閉経の影響)
厚生労働省 e-ヘルスネット「女性の睡眠障害」
